とある図書館司書見習いのブログ

図書館情報学や図書館のあれこれについて語る。

図書館指定管理者制度導入で経費節減サービス向上謳うはいいけれど...

新しく和歌山市駅に建築が予定されている新和歌山市民図書館ですが、結局そこも指定管理者制度が導入されるのかと思うと少し残念というか悲しいかなと思います。

 

新しくできる図書館、話題に上る図書館というのはほぼほぼ民間企業への委託あるいは委託の検討がなされているような気がします。私自身反対派ではありますが、もはやこの図書館の流れを変えることはできないのかなと諦めムード。

 

実際、指定管理者制度導入で新しく生まれ変わった図書館の多くはニュースを追いかける限り、見た目もお洒落で素敵なところが多く、一度は行ってみたいと感じますし、インスタ映えですし(!)、一つの観光スポットにもなってしまいそうなそういうところな気がします。

カフェも併設されるのがもはや当たり前になりつつあるので、本を読んだ後にもゆったりコーヒーを飲んでくつろげそうです。

 

館内の設備自体も一新されていると思いますし、例えば自動貸出返却機の導入なんかもされていることでしょう。(この辺の新しい機器に関してはほんと図書館員利用者双方にとって利便性が向上していると感じるのでありがたいです。)

 

ただなんというか...お洒落な雰囲気にして、新しい機器の導入で利便性をはかってと図書館を利用したいと思わせるような話題作りになってはいると思うのですが、それだけ図書館に予算を投入できるなら実際そこで働く図書館員の待遇ももっと良くなっていいのではないか?という不満があります...

 

経費削減(人件費削減)と住民サービスの向上...たしかに指定管理者制度導入の目的に適っているわけですが。

 

図書館サービスが今までよりも向上しそうに見えるので、指定管理者制度導入に対して反対する意見もあまり出てこなさそうですし(まぁそもそも多くの人は図書館のニュースにあまり関心を持たれていないと思いますが)。

 

行政は指定管理者制度の導入で住民たちにはより良いサービスを提供しますよと謳いつつ経費削減(人件費の削減)を巧く進めていきたいのかなと今の図書館業界の動向がそんな風に見えてきました。

 

自動貸出機なんかの導入でカウンターにいるスタッフ数を減らす等は致し方ないことだと思いますし、むしろ減らせる状況になったのであれば減らしていってもいいと思うのですが、住民サービスの向上を最終的に握っているのは図書館員だと個人的には思っています。

 

利用者がコンピュータでの資料検索の方法がわからない時にお手伝いできるのは図書館員だと思いますし、館内のどこに探している本があるのかわからないという方に案内ができるのも図書館の資料に日々触れている図書館員だと思います。

また探している資料が明確ではなく曖昧であっても一緒に探して、利用者が本当に求めている資料を見つけ出すのも図書館員のできることだと思います。

 

 

人件費の削減は給与そのものを減らすこと、図書館で働くスタッフを減らすことの二つがあります。

給与に関しては図書館員の多くが月20万にも満たない給料で働いてると思いますし、しかも正規で雇用してくれるところが少なくなっていますので不安定な状況で働いてる人も多いと思います。

そんな状況ですと一人暮らしであればどうにかやりくりしていくことも難しくないかもしれないですが、結婚や出産といった幸せなことが訪れた時、お金のやりくりに相当苦しむことになると感じます...。

 

次にスタッフを減らすことによる人件費の削減に関してですが減らしすぎは危険だと感じます。

例えばほんとに図書館業務をまわすことのできる最低限の人数で業務をやりくりし、一人でも病欠かなにかの理由で抜けると他のスタッフが大変なことになってしまう状況などです。

 

風邪やインフルエンザ等の急病でスタッフに欠員が発生することはたまにあることだと思いますし(というかあることと想定した上でスタッフ数の下限を決めるのが基本であってほしいと思います)。

 

そういった時に最低限の人数でやりくりしているとその補充をすることもできないので、他のスタッフが抜けた分の埋め合わせをすることになり、その分の負担がもろにきてしまいます。他のスタッフもとても辛いですし、休んでしまったスタッフも苦しい思いをしてしまいます。持続的に業務を続けていくにはやはり余裕のあるスタッフの数が必要だと個人的には感じます。

 

また最低限の人数でのやりくりは、基本的な図書館業務で多忙になってしまうので、利用者への対応がおごそかになってしまう可能性があることです。ここは住民サービスの向上を目的とするならより大事な部分であると思います。

 

毎日すべき図書館業務というのは決まっていて、図書館業務だけで忙しくなる時とむしろ余裕ができる時と日によって異なるのですが、最低限の人数でやってしまっていると図書館業務が多忙になってしまった時、利用者対応への時間がさけなくなってしまいます。

 

利用者対応も日によって異なり、多くの人が尋ねにくる日もありますし、全然尋ねられることがなかったという日もあります。

 

そうした予測不可能性にしっかり対処できるよう、尋ねられれば余裕を持って資料探しのお手伝いができるような状況にしておくのも大事なのではないでしょうか。

 

ただしこれは悪いことばかりでもありません。最低限の人数でやりくりするのでそれだけ業務の効率化を迫られます。なので業務の効率化にはつながると感じます。(効率化は人員配置の仕方を上手くすることでも可能なのではないかと思います。)

 

というわけで人件費にはもっと予算を投入してほしいです。人的資源への予算投入で図書館サービスのさらなる向上にもつながると思いますので。